芭蕉DB

芭蕉の嗜好

  • 酒/食/


  •  芭蕉はいったい酒を好きだったのかどうか、酒にまつわる句をここで列挙してみよう。

    酒のめばいとど寝られぬ夜の雪

    二日酔ひものかは花のあるあひだ

    月花もなくて酒のむ独り哉

    御命講や油のような酒五升

    花にうき世我が酒白く飯黒し

    朝顔は酒盛知らぬ盛り哉

    扇にて酒くむかげや散る桜

    草の戸や日暮れてくれし菊の酒

    椹や花なき蝶の世捨酒

    二日にもぬかりはせじな花の春

    酒飲みに語らんかかる滝の花

    初春まづ酒に梅売る匂ひかな

    蒼海の浪酒臭し今日の月

    酔うて寝ん撫子咲ける石の上

    鰹売りいかなる人を酔はすらん

    蛍見や船頭酔うておぼつかな

    夕顔や酔うて顔出す窓の穴

    雪を待つ上戸の顔や稲光

    龍門の花や上戸の土産にせん

     これらは、「酒」・「酔い」・「上戸」などを含む句であるが、酒に酔ったと詠っているのは、第1・2・3句だけで、他は酒をキーワードとしてはいるものの、呑むことに執着しているものは一つも無い。
     以上から類推するに芭蕉は、酒は嫌いではなかったが、特に好んで深酒するようなことはなかったようである。ただし、元禄4年4月23日の夜は、嵯峨の落柿舎にあって退屈していたところへ、去来・凡兆・千那らがやって来た。おまけにこの日に限って各地の門人から書簡が多く寄せられたこともあって気分をよくしたか、深酒になったようである。翌日の嵯峨日記が記録されていない。二日酔い症状だったのであろう 。また、「
    二日にもぬかりはせじな花の春」は久しぶりの郷里で過ごす年越しに気分が良くて呑み過ぎたか?。


    ウリ

    秋涼し手ごとにむけや瓜茄子

    朝露や撫でて涼しき瓜の土

    子供等よ昼顔咲きぬ瓜剥かん

    瓜作る君があれなと夕涼み

    瓜の皮剥いたところや蓮台野

    瓜の花雫いかなる忘れ草

    子供等よ昼顔咲きぬ瓜剥かん

    花と実と一度に瓜の盛りかな

    山陰や身を養はん瓜畠

    夕にも朝にもつかず瓜の花

    我に似るなふたつに割れし真桑瓜

    初真桑四つにや断たん輪に切らん

    柳行李片荷は涼し初真桑

    闇の夜きつね下はふ玉真桑

    ここに掲載したものがすべて「食べるための瓜」ばかりではないが、それにしても関心の高さは相当なものである。

     

    蒟蒻(こんにゃく)

    蒟蒻に今日は売り勝つ若菜哉

    蒟蒻の刺身もすこし梅の花

     

     


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