寒菊の隣もあれや生け大根 (『笈日記』)
涼風や青田のうへの雲の影 (『韻塞』)
新麦や笋子時の草の庵 (『篇突』)
新藁の屋根の雫や初しぐれ (『韻塞』)
うの花に芦毛の馬の夜明哉 (『炭俵』 『去来抄』)
麥跡の田植や遲き螢とき (『炭俵』)
やまぶきも巴も出る田うへかな (『炭俵』)
在明となれば度々しぐれかな (『炭俵』)
はつ雪や先馬やから消そむる (『炭俵』)
禅門の革足袋おろす十夜哉 (『炭俵』)
出がはりやあはれ勸る奉加帳 (『續猿蓑』)
蚊遣火の烟にそるゝほたるかな (『續猿蓑』)
娵入の門も過けり鉢たゝき (『續猿蓑』)
腸をさぐりて見れば納豆汁 (『續猿蓑』)
十團子も小つぶになりぬ秋の風 (『續猿蓑』)
大名の寐間にもねたる夜寒哉 (『續猿蓑』)
御命講やあたまの青き新比丘尼 (『去来抄』)
人先に医師の袷や衣更え (『句兄弟』)
茶の花の香りや冬枯れの興聖寺 (『草刈笛』)
夕がほや一丁残る夏豆腐 (『東華集』)
木っ端なき朝の大工の寒さ哉 (『浮世の北』)