(元禄7年2月25日 芭蕉51歳)
過ぐれば手帳の部に落ち候:これ以上奇抜になると、手帳俳諧になってしまう、の意。「手帳」とは奇怪な俳句のこと。軽蔑の意味で使われる。「手帳俳諧」。
よき句をうるさがる心ざし感心あるべきことにや:良い俳句を評価しないような志ではどうしようもないです、の意。ここに「よき句」とは、「軽み」の句のこと。そういうもののよさに気づかない者をあげつらっているのである。
古狸よろしく鼓打ちはやし候はん:其角や嵐雪は古狸で何をしているか、私は知らない、の意。この頃、其角・嵐雪とは心理的な齟齬が生じていて、それを抑圧して付き合っていた。
宝生沾圃:沾圃の歳旦句をこの歳旦帖に納めた。沾圃が、「軽み」を修得しようとしていることに、芭蕉は好感を持っている。沾圃についてはWho'sWho参照。
力相撲のねぢ合ひ:腕こきのただ力ばかりの作品、の意で、ここでは嵐雪あたりの歳旦句を指している。芭蕉の「軽み」の提唱に素直に応じていないことを揶揄しているのである。
野坡:Who'sWho参照。
愚句:「蓬莱に聞かばや伊勢の初便り」を指す。
美濃如行:如行については、Who'sWho参照
膳所正秀:膳所の重鎮水田正秀。詳細は、Who'sWho参照。
彦根:森川許六の彦根蕉門の五つ物を指す。許六については、Who'sWho参照。