芭蕉db

蓬莱に聞かばや伊勢の初便

(真蹟自画賛/炭俵)

(ほうらいに きかばやいせの はつだより)

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 元禄7年元旦。江戸にて作られた句。歳旦句として京都で出版する予定であるとしているがその歳旦帖は現存しない。この句の解説は芭蕉自ら、「曲水宛書簡」、「意専宛書簡」、「許六宛書簡」などで説明している。
 元禄7年は芭蕉の人生最後の年である。新春を寿ぐめでたい句でありながら、歳旦吟に伊勢が出てくるのは、無意識の中に最後の旅への情念が萌芽していたためであろうか。

蓬莱に聞かばや伊勢の初便

 蓬莱は、ここでは正月の飾り物の蓬莱飾りのこと。三方に松竹梅を立てて、白米・歯朶・昆布・ゆずり葉を敷き、橙・蜜柑・柚・橘・かちぐり・野老・ほんだわら・ころがき・伊勢海老・梅干しなどをその上に飾る。新春の景物である。その蓬莱にそっと耳を寄せてみると、伊勢神宮の清浄な空気が伝わってくるようで、これが伊勢からの初便りだというのである。 (『去来抄』参照)
 


東京新宿花園神社にある句碑(牛久市森田武さん提供)