深川芭蕉庵から許六に宛てた書簡。許六が芭蕉を尋ねたときに不在であったことを詫び、近々の許六亭訪問の予定を伝えた一通。芭蕉の繁忙さが伺われて面白い。
御細翰辱致二拝見一、愈御無事被レ成二御座一候而、珍重不レ過之奉レ存候:<ごさいかんかたじけなくはいけんいたし、>いよいよごぶじにござなされそうろうて、ちんちょうこれにすぎずぞんじたてまつりそうろう>と読む。ご丁寧な御手紙を頂き恐縮していますが、お元気のご様子何よりであります、の意。
先日は早々御入来候て又忝、少之間素堂に罷有、不レ得二御意一、千萬御残多存候:<せんじつはそうそうごじゅらいそうろうてまたかたじけなく、すこしのかんそどうにまかりあり、ぎょいをえず、せんばんおのこりおおくぞんじそうろう>と読む。先日は、折角来ていただいたと言うのに少しの間素堂宅に行っておりましてお会いできず、残念至極に存じます。素堂はWho'sWho参照。
年明候而少持病心に罷有候:<としあけあおうろうてすこしじびょうこころにまかりありそうろうは>と読む。正月になってから少々胃腸の調子が思わしくありませんが、それは(正月の餅の取り過ぎかもしれません)、の意。
昨日は淡州公へ参、御宅へと存候處、段々他家へ入重り、日半に成候故、延引仕候:<さくじつはたんしゅうこうへまいり、おたくへとぞんじそうろうところ、だんだんたけへいりかさなり、ひなかばになりそうろうゆえ、えんいんつかまつりそうろう>と読む。昨日は旗本小出淡路守を訪問し、その後貴家を尋ねようとしていましたが、他所で時間をとられてしまい、遅くなってしまいましたので延期致しました、の意。
難レ去隙入御座候間、又延引:<さりがたきひまいりござそうろうあいだ、またえんいん>と読む。(今日明日は)断れない日程が入ってしまいましたので、また予定を延期して、の意。
心懸罷有候間、かならず御尋可二申上一候:<こころがけまかりありそうろうあいだ、・・おたずねもうしあぐべくそうろう>。(15,6日の間を)心積もりしておりますので、かならず伺います。