許六と芭蕉の頻々とした交流の記録。芭蕉はこの時期甲州への旅行を計画していたこと。ただし、寒い上に、周辺からも先方からも寒いことが知らせれて来たりして春に延期すること、18日まで非常に忙しいから来ないようにされたい、20日頃なら会えるので来てほしい、っただし、20日にそちらが忙しくて来られないのであればその後の日程を書いて人を寄越してくれ、などという連絡をつづる。
御手簡再三辱、先日御入来之処、いづれもいづれも御残多奉レ存候:<ごしゅかんさいさんかたじけなく、せんじつらいごじゅらいのところ、いずれもいずれもおのこりおおくぞんじたてまつりそうろう>と読む。何度もお手紙を頂戴し、またお出かけ頂いたところ、その都度お会いできずに残念であります、の意 。許六は少なくともこの日元禄5年11月13日以前に、2回以上芭蕉庵を訪問しているらしい。
甲州旅立之事、寒気甚鋪御座候間、春に成候而可レ然由:<こうしゅうたびだちのこと、かんきはなはだしくござそうろうかん、はるになりそうろうてしかるべきよし>。芭蕉はこの時期甲州(山梨県)へ旅行の計画があったらしい。行き先は都留市谷村だったであろう。結局、 この時期の寒さのために延期し、最終的には実行されなかったようだ。
凍風肌を稜など申来候而:<とうふうはだをしのぐなどもうしきたしそうろうて>と読む。
其間此方へも御出御無用に可レ被レ成候:18日までは予定が一杯なので、当方に来られるのは20日過ぎにしてほしい、だから18日までは来ないようにしてほしい、の意。
廿日之比若し御手隙御座候はヾ、待入存候。貴面御約可レ仕候:<はつかのころもしおてすきござそうらはば、まちいりぞんじそうろう。きめんごやくつかまつるべくそうろう>。今月二十日ごろにお隙であればお越し下さい。お会いできるようお約束いたします、の意
貴面:<きめん>。お会いした上で、の意。手紙の慣用常套句。