去来抄同門評

目次へ

同門評  凡篇中ノ異評自ヲ是トスルニ似タルハ、いまだ判者なきゆへ也。猶、後賢を待ち侍る*


D01 腫物に柳のさはるしなへ哉(芭蕉)
D02 雪の日に兎の皮の髭つくれ(芭蕉)
D03 山路きて何やらゆかし菫草(芭蕉)
D.04 笠提げて墓をめぐるや初しぐれ(北枝)
D05 春の野をたゞ一のミや雉子の聲(野明)
D06 馬の耳すぼめて寒し梨子の花(支考)
D07 白水の流も寒き落葉哉(木導)
D08 卯の花に月毛の駒のよ明かな(許六)
D09 鶯の啼て見たればなかれたか/起ざまに眞そつとながし鹿の足(杜若)/干鮭となるなる行や油づゝ(雪芝)
D10 鶯の舌に乗せてや花の露(半残)
D11 鶯の身を逆にはつね哉(其角)/鶯の岩にすがりて初音哉(素行)
D12 桐の木の風にかまハぬ落葉かな(凡兆)
D13 駒買ひに出迎ふ野べの薄かな(野明)
D14 嵐山猿のつらうつ栗のいが(小五郎)/花ちりて二日おられぬ野原哉
D15 ちる時の心やすさよけしの花(越人)
D16 電のかきまぜて行闇よかな(去來)
D17 時鳥帆裏になるや夕まぐれ(先放)
D18 取れずバ名もなかるらん紅葉鮒(玄梅)
D19 鞍坪に小坊主のるや大根引(ばせを)
D20 夕ぐれは鐘をちからや寺の秋(風國)
D21 應々といへどたゝくや雪のかど(去來)
D22 幾年の白髪も神のひかり哉(去來)
D23 白雨や戸板おさゆる山の中(助童)
D24 さびしさや尻から見たる鹿のなり(木導)
D25 唐黍にかげろふ軒や玉まつり(洒堂)
D26 玉祭うまれぬ先の父こひし(甘泉)
D27 御命講やあたまの青き新比丘尼(許六)
D28 門口や牛玉めくれてはつしぐれ(作者不覺)
D29 猪の鼻ぐすつかす西瓜かな(卯七)
D30 まんぢうで人を尋ねよ山ざくら(其角)
D31 蕣にほうき打敷おとこ哉(風毛)
D32 年たつや家中の禮は星づきよ(其角)/元日や土つかふたるかほもせず(去來)
D33 風國曰、彦根のほ句、一句に季節を二ツ入ル、手曲有
D34 盲より唖のかはゆき月見哉(去來)

D35 の裏を見せけり秋の風
D36 時雨るゝや紅粉の小袖を吹きかへし(去來)

D37 はつのいのこに丁どしぐるゝ/生鯛のひちひちするをだいにのせ/どこへ行やらうらの三介
D38 梅の花あかいハあかいはあかい ハな(推然)
D39 行ずして見五湖いりがきの音をきく(素堂)/なき人の小袖も今や土用ぼし(ばせを)
D40 梅白しきのふや鶴をぬすまれし(ばせを)
D41 鶯の海むいてなくすまの浦(卯七)
 

先頭へ戻る


本文中、さまざまに異論のある評価について、自らのの批評が正しいように記しているのは、未だ正しい判断をする人がいないためである。後世の賢者の判定を待つ。