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鶯の身を逆にはつね哉

鶯の岩にすがりて初音哉

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   鶯の身を逆にはつね哉           其角
   
鶯の岩にすがりて初音哉         素行

去來曰、角が句ハ 乗煖の亂鶯也。幼鶯に身を逆にする曲なし。初の字心得がたし*。行が句ハ鳴鶯の姿にあらず*。岩にすがるハ、或ハ物におそはれて飛かゝりたる姿、或餌ひろふ時、又ハこゝよりかしこへ飛うつらんと、傳ひ道にしたるさま也。凡物を作するに、本性をしるべし。しらざる時ハ珍物新詞に魂を奪ハれて、外の事になれり*。魂を奪るゝは其物に着する故也。是を本意を失ふと云*。角が功者すら時に取て過有*。初學の人慎むべし。