笈の小文

(貞亨4年10月25日〜貞亨5年4月23日)

(芭蕉44、5歳) 


 『笈の小文』は、貞亨4年10月、伊賀への4度目の帰郷に際して創作された作品を集めて一巻としたものであるが、『奥の細道』のように芭蕉自身が書いた旅行記ではない。これは、その後芭蕉自身が書いた真蹟短冊や書簡などをもとに、芭蕉死後大津の門人川井乙州によって編集されて成ったものである。しかし、この集はまた実によくできていて、『奥の細道』にも十分に匹敵する文芸作品となっている。これは、集内の句を別にすれば芭蕉が『奥の細道』以後も、詞書などの句文等に推考しておいたためである。
 この旅は、亡父三十三回忌の法要に参列するためであったが、それ以上に売れっ子芭蕉にとって名古屋・大垣などの門人の招請をもだしがたく、彼らの要求に従って行った面が多分にある。それだけに自信と希望に満ちた旅でもあった。「旅人とわが名呼ばれん初しぐれ」の気分は、『野ざらし紀行』の「野ざらしを心に風のしむ身かな」のそれとは雲泥の差であった 。
 この旅そのものは、貞亨4年10月25日に江戸深川を出発し、貞亨5年8月末に江戸に戻るまでの1年半に及ぶ長期のものであった。 (ただし、旅の最後木曽街道から北国街道までの間は『更科紀行』と呼ばれている。これも、乙州の編集の結果である。) 
 なお、本集には、『笈の小文』の他さまざまな呼称がつけられている。 『大和紀行』・『卯辰紀行』・『芳野紀行』・『大和後の行記』・『須磨紀行』・『庚午紀行』(支考編)など多数にのぼる。

下記の章立ては読み易さを考慮して筆者の付したもので原作には無いことをことわっておく。

  1. 序文

  2. 其角亭餞別会

  3. 露沾亭餞別会

  4. 旅の譜

  5. 鳴海

  6. 豊橋

  7. 渥美半島

  8. 伊良湖崎

  9. 熱田神宮

  10. 蓬左

  11. 雪見

  12. 歌仙

  13. 伊賀上野

  14. 新春

  15. 新大仏寺

  16. 伊勢山田

  17. 菩提山

  18. 龍尚舎

  19. 網代民部雪堂

  20. 草庵の会

  21. 伊勢神宮

  22. 吉野へ

  23. 道中

  24. 初瀬

  25. 葛城山

  26. 多武峰

  27. 龍門

  28. 西河

  29. 苔清水

  30. 高野山

  31. 和歌の浦

  32. 紀三井寺

  33. 四月朔日

  34. 灌仏会

  35. 唐招提寺

  36. 別れ

  37. 大坂

  38. 須磨

  39. 明石(大団円)



芭蕉文集へ



(since:97/11/20)