芭蕉db

笈の小文

(雪見)


有人の會*

ためつけて雪見にまかるかみこ哉

(ためつけて ゆきみにまかる かみこかな)

いざ行む雪見にころぶ所まで

(いざゆかん ゆきみにころぶ ところまで)


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表紙 年表


ためつけて雪見にまかるかみこ哉

 「ためつける」とは、着物の折り目を正しく折ることを言う。雪の宴に招かれて旅の薄汚い紙子のせめて折り目だけでも正していこうかと詠んでいる。招いてくれた主人への挨拶吟。
 

いざ行む雪見にころぶ所まで

 上の句に続いて、さあ雪見の宴に出かけましょう。雪に足を取られてすってんころりんと転ぶかもしれないけど。心浮き立つ雪の宴への期待感を楽しく詠いあげた。
 この句は、貞亨4年12月3日名古屋の門人夕道(風月堂孫助)亭での雪見の席が初案で、『真蹟懐紙』では;
  書林風月と聞きしその名もや
  さしく覚えて、しばし立ち寄
  りて休らふほどに、雪の降り
  出でければ

いざ出でむ雪見にころぶ所まで

    丁卯臘月初、夕道何某に贈る
とある。これとは別に、

いざさらば雪見にころぶ所まで

(花摘)

があって、これが決定稿となった 。実際は、離別吟である。『笈の小文』は第2稿であるが、句の勢いから言えばこれが最も良いと思われるのだが。。。。


名古屋市 法生院(大須観音)の句碑「いざさらば雪見にころぶ所まで

「いざ行かむ雪見にころぶ所まで」 の句碑は、全国的に八方探しましたが、有りませんでした。「いざさらば・・」の句碑は、岐阜、長野等にも有りましたが、名古屋で詠んだと伝えられるので、宝生院の句碑を選びました。(牛久市森田武さん)