山里に喰ものしゐる花見かな (『あら野』)
この比は小粒になりぬ五月雨 (『あら野』)
かたびらは浅黄着て行清水哉 (『あら野』)
一夜きて三井寺うたへ初しぐれ (『あら野』)
吾書てよめぬもの有り年の暮 (『あら野』)
湖を屋ねから見せん村しぐれ (『あら野』)
一めぐり人待かぬるをどりかな (『あら野』)
おさな子やひとり食くふ秋の暮 (『あら野』)
灌佛の其比清ししらがさね (『あら野』)
こがらしや里の子覗く神輿部屋 (『あら野』)
頃日の肌着身に付く卯月かな (『嵯峨日記』)
待たれつる五月も近し聟粽 (『嵯峨日記』)
みちばたに多賀の鳥井の寒さ哉 (『猿蓑』)
晦日も過行うばがいのこかな (『猿蓑』)
時鳥けふにかぎりて誰もなし (『猿蓑』)
さびしさに客人やとふまつり哉 (『猿蓑』)
あながちに鶏とせりあはぬかもめ哉 (『猿蓑』)
菜畠や二葉の中の虫の聲 (『猿蓑』)
ふりかねてこよひになりぬ月の雨 (『猿蓑』)
僧正のいもとの小屋のきぬたかな (『猿蓑』)
ゐなか間のうすべり寒し菊の宿 (『猿蓑』)
野の梅のちりしほ寒き二月哉 (『猿蓑』)
一枝はおらぬもわろし山ざくら (『猿蓑』)
穐風や田上山のくぼみより (『猿蓑』)
鶯や雑煮過ての里つヾき (『續猿蓑』)