火桶抱ておとがい臍をかくしけり 路通
雪ごとにうつばりゆがむ住ゐ哉 苔翠
冬篭又依りそはん此はしら 愚句
句はあしく候へ共、五十年来*人の見出ぬ季節、愚老が拙き口にかかり、若上人真霊あらば我名ヲしれとぞわらひ候*。此冬は物むつかしく句も不レ出候。 以上
芭蕉子
尚白様
此作者は松もとにてつれづれよみたる狂隠者、今我隣庵に有:この「作者」とは路通のこと。路通についてはWho'sWho参照。「松もと(本)」は、滋賀の大津のこと。「つれづれ」は『徒然草』のことで、路通が古典に精通していたことを指す。その路通は、この時芭蕉庵近くに住んでいたのである。
若上人真霊あらば我名ヲしれとぞわらひ候:<もししょうにんしんれいあらば・・・>と読む。ここに上人は日蓮を指す。冗談に託しているものの、「御命講」という過去に無いコードを発見することで、一つの情緒を顕にすることに成功した、と言う自負がここには漲っている。