芭蕉db

菊鶏頭切り尽しけり御命講

(尚白宛真蹟書簡)

(きくけいとう きりつくしけり おめいこう)

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 元禄元年10月13日、宗祖日蓮の命日を記念した日蓮宗の御命講日、いわゆる御会式である。門人尚白宛書簡参照。
 この句について、芭蕉は尚白宛書簡に、「句はあしく候へども、五十年来人の見出ぬ季節、愚老が拙き口にかかり、若し上人真霊あらば我名を知れりとぞわらひ候」と書いている。冗談に託しているものの、よほどの自信だったことが伺われる。御命講のような下世話なコードを導入したことに俳諧精神を発露したという自負が有ったのであろう。なお、御命講については、他に「御命講や油のような酒五升」という名句がある。
 日蓮は、身延山から両親の墓参のために常陸の国に向う旅の途次、1282(弘安5)年10月13日辰の刻(朝8時ごろ)池上宗仲の邸(現東京都大田区池上本門寺)で死去。享年61歳。波乱万丈の人生を象徴するように地震と雷鳴が起こり、また宗仲邸内の桜が一斉に季節外れの花をつけたという故事から、御命講には桜の花になぞらえた万燈がともされ、萬燈会が華やかに催される。法華太鼓と念仏と萬燈会、御命講は当時華やかな祭典であった。


鶏頭の花 茅ヶ岳山麓で撮影

この年も御命講に桜が咲いた。2004年10月12日久遠寺祖師堂前で

菊鶏頭切り尽しけり御命講

 御命講の季節ともなれば秋の草花も残り少なくなってくる。残ったわずかな菊やケイトウを日蓮上人尊像に供えてしまえば、もはや秋の草花は無くなってしまう。