芭蕉db

木因宛書簡

(天和2年3月20日 芭蕉39歳)

書簡集年表Who'sWho/basho


遠路貴墨、干白魚一箱被御意*、誠御心指御懇情辱奉存候*。愈御無異之旨珍重不之候*。野翁無恙閑居に暮罷有候*。其元御暇なき折々も人々御すヽめ被成之由*、感心不(浅?)存候。愈御情(精)入、御連中御引立可成候。荊口丈*御作などは如何共可成御器量に相見え候*。とう山丈*御作いかが成行申候哉、是又、承度候。且貴翁御発句感心仕候。猫を釣夜*、其気色眼前に覚候。土筆をしぞ*、是猶妙、御作意次第改る様に被覚珍重、兎角日々月々に改る心無之候而は聞人もあぐみ*作者も泥付*事に御座候へば、随分御心ヲ被留、人々御いさめ可成候*
一、当春付句懸御目候處、御評具に致拝見*、大慶不浅義(儀?)に御座候。其返事、濁子丈も先達而申通し候間、追而相達可申候*。当春之句共
   梅柳嘸若衆哉女哉
     上巳*
  袖よごすらん田螺の蜑の隙をなみ
  あさつきに祓やすらん桃の酒  其角
  梅咲リ松は時雨に茶を立る比  杉風
  桜がり遠山こぶしうかれたる  嵐蘭
  主悪し桃の木に竿もたせたる  同
  艶奴今やう花にらうさいス   愚句
御使またせ置キ(貴)報相認候故、早筆に及申候*。唯今桑名に御滞留之由、会被成候はば、懐帋御見せ可成候*。来る卯月末五月之比は必上り候而、可御意*。啓首
    三月廿日               芭蕉翁書判
  木因雅士
    御報
尚々濁子丈御隙無御座、出合断絶*、作意も上り不申、気の毒に存候。とう山丈御油断なく御情(精?)に被入候様に貴翁御指引御尤奉存候。且又白魚之書付*、風流猶感心過当之至に存候。

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 桑名に滞留中の木因に宛て、送られてきた干し白魚と書状への謝辞を述べた江戸からの返書である。談林俳諧からの改革を熱っぽく語り、「兎角日々月々に改る心無之候而は聞人もあぐみ*作者も泥付*事に御座候へば、随分御心ヲ被留、人々御いさめ可成候。」と書いて木因の同調を期待しているのがよく分かる。
 なお、本書簡には、この天和2年7月には上京すると書いているが実現しなかった。