芭蕉db

嵯峨日記

(4月25日)


二十五日

千那*大津 ニ歸。

史邦*・丈 艸*被訪 。

題落柿舎      丈艸

深對峨峯伴鳥魚

(ふかくがほうにたいしてちょうぎょをともなう)

就荒喜似野人居

(こうにつきやじんのきょににたるをよろこぶ)

枝頭今欠赤虬卵

(しとういまかくせききゅうのらん)

靑葉分題堪學書

(せいようだいをわかちてしょをまなぶにたえたり)

尋小督墳       同

強撹怨情出深宮

(たってえんじょうをみだしてしんきゅうをいず)

一輪秋月野村風

(いちりんのしゅうげつやそんのかぜ)

昔年僅得求琴韻

(せきねんわずかにきんいんをもとめえたり)

何処孤墳竹樹中

(いずくんぞこふんちくじゅのうち)

          史邦*

芽出しより二葉に茂る柿の実

(めだしより ふたばにしげる かきのさね)

途中吟       丈艸

杜宇啼や榎も梅櫻

(ほととぎす なくやえのきも うめさくら)

黄山谷*感句

杜門句陳無己

(もんをとじてくをもとむちんむき)

對客揮毫秦少游

(きゃくにたいしてふでをふるうしんしょうゆう)

乙州*来たりて武江の 咄。並燭五分俳諧一巻*其内 ニ、

半俗の膏薬入は懐に

(はんぞくの こうやくいれは ふところに)

臼井(碓氷)の峠馬ぞかしこき   其角*

(うすいのとうげ うまぞかしこき)

腰の簣に狂はする月

(こしのあじかに くるわするつき)

野分より流人に渡ス小屋一  同

(のわきより るにんにわたす こやひとつ)

宇津の山女に夜着を借て寝る

(うつのやま おんなによぎを かりてねる)

偽せめてゆるす精進  同

(いつわりせめて ゆるすしょうじん)

申ノ時計ヨリ風雨雷霆*、雹降ル。雹※の大イサ三分匁有。龍空を過る時雹降 。

※大ナル、カラモゝノゴ(ト)ク少(小)サキハ柴栗ノゴトシ


前へ 次へ

表紙へ 年表へ



祇王寺庭園(牛久市森田武さん提供)