芽出しより二葉に茂る柿の実 (『嵯峨日記』)
照つゞく日や陽炎の柴うつり
廣沢やひとり時雨るゝ沼太良 (『猿蓑』)
狼のあと蹈消すや濱千鳥 (『猿蓑』)
膝つきにかしこまり居る霰かな (『猿蓑』)
初雪に鷹部屋のぞく朝朗 (『猿蓑』)
蜀魂なくや木の間の角櫓 (『猿蓑』)
馬士の謂次第なりさつき雨 (『猿蓑』)
白雨や鐘きゝはづす日の夕 (『猿蓑』)
はてもなく瀬のなる音や秋黴雨リ (『猿蓑』)
月影や拍手もるゝ膝の上 (『猿蓑』)
野畠や鴈追のけて摘若菜 (『猿蓑』)
春雨や田簔のしまの鯲賣 (『猿蓑』)
泥龜や苗代水の畦つたひ (『猿蓑』)
有明のはつはつに咲く遅ざくら (『猿蓑』)
笠あふつ柱すヾしや風の色 (『猿蓑』)
うぐひすや野は塀越の風呂あがり (『續猿蓑』)
ばせを葉や風なきうちの朝凉 (『續猿蓑』)
さよ姫のなまりも床しつまぬ花 (『續猿蓑』)
夜神楽に歯も喰しめぬ寒哉 (『續猿蓑』)
煎りつけて砂路あつし原の馬 (『續猿蓑』)