(元禄7年5月14日)
去年申上候発句ども
此は自集に出申候
此は露川が集に出候
此句、他ノ集に出候。併、句作ぬるく候間、仕直し候而、此度の集に出し可レ申候と奉レ存候。
此句、心柱と申者の集に出し候。句ヲあやまりて出し候。先頃いセの文代と申者まいり候而、發句を望候故、最早出たる句に候共、此句を入直し候へと申遣し候。
此は車庸が集ノ歌仙に出。
此句、又心桂が集に取出し候共、此度又歌仙の発句に仕候
此句、自集に出し候。
此句、又心桂が集に出し候。殊に句をあやまり候。素牛集に再出。
車庸がもとにて二句。
右の二句も、心桂集に出し候。電の句は歌仙の発句、則去秋浪化へ参候刻ノ會。
毀落柿舎三句
弟のうれひに逢ひて
右之通、去年発句被二仰下一候時より書写し進上仕候。此内、其元ノ集に入候句共、乍二慮外一印御つけ被レ遊可レ被レ下奉二頼上一候。残ル句、浪化方に遺し申度候。下拙句も続集に五句御加入被レ遊被レ下候由、承候。心桂が集に去年取出候句共多く、近比難儀仕候。若五句の内にては無レ之やと無二心元一奉レ存候。此段は前に委細御断申上候。發句の事被二仰下一候以後、一句も外へもらし不レ申候。又、御發句、去年より被二仰下一候内、若其元の御集にもれ申候御發句も御座候はゞ、此度浪化集に拝領仕度候。其外にも何とぞ御句ども被レ遣被レ下候はゞ、別而忝可レ奉レ存候。
御発句
此発句、大坂にて承候而、素牛が集に出し候。
此も同前かと奉レ存候。
右之通に御座候。此内、御集にもれ候を、拝領仕度奉レ存候。直に此両紙に御しるし被レ遊可レ被レ下候。近比御事多候内、迷惑仕候へども、御集に入候を又外へ出し候はんもきの毒に奉レ存候故、窺申候。 巳上
五月十四日 去来
芭蕉最後の西上の旅で島田に向かう途中頃に去来は書簡を発していた。『浪化集』のプロットを報告するとともにアドバイスを期待している。