芭蕉db

曲水宛書簡

(元禄3年9月6日 芭蕉47歳)

書簡集年表Who'sWho/basho


正秀・珍夕両吟一番出来にて候*。一入大悦仕候*。珍夕、ひさご此かた上達、比えの山にぼくりはかせ候*。御油断被成まじく候。

甘塩の鰯かぞふる秋のきて*、と申第三致て我を驚しをり候。越人、庵にしばしとヾめ置候*

川原涼み

  川かぜや薄柿着たる夕涼

猪のしゝのともに吹るゝ野分哉

うづら鳴なる坪の内*、と云ふ五文字、木ざはしや、と可有を珍夕にとられ候。
此辺やぶれかゝり候へ共*、一筋の道に出る事かたく、古キ句に言葉のみあれて*、酒くらひ豆腐くらひなどゝ、のゝしる輩のみに候。
  ある智識のゝ玉ふ。なま禅・なま仏、是魔界*

       稲妻にさとらぬ人のたつとさよ

隠通*が守袋に入てとらせ度候。其角が状にて路通が披露仕候間、左様に御意得被成可下候*。猶追而可芳慮*。 頓首
    九月六日                     はせを
   曲水雅伯
   旅窓

書簡集年表Who'sWho/basho


粟津の義仲寺から江戸勤番中の曲水に宛てた書簡である。正秀や珍夕の上達を伝えることで曲水へプレッシャーをかけて、俳諧精進を忘れないように暗黙のサインを送っているのが興味深い。
 この書簡から、曲水は其角や路通とも親交があったことが伺える。