芭蕉db

桐の木に鶉鳴くなる塀の内

(猿蓑)

(きりのきに うずらなくなる へいのうち)

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 元禄3年作。47歳。句作の場所はいずれ上方だが詳しくは不明。ただし、この句が、藤原俊成の「夕されば野辺の秋風身にしみて鶉鳴くなり深草の里」(『千載集』)を現地で連想したとすれば京都ということになる。
 この句は、最初「
きざはしや鶉鳴くなる坪の内」であったが、洒堂の句「きざはしや鞠<まり>のかかりの見ゆる家」と類似しているので改案したと、曲水宛書簡にある。

桐の木に鶉鳴くなる塀の内

 高い塀で囲まれた屋敷。その塀よりもずっと高く大きな桐木が見える。その邸の中から鶉<ウズラ>の鳴声が聞こえてくる。立派な屋敷の内側に飼われている鶉のようであるから、鳴声を楽しむための鶉で、卵を食べたり、肉を食ったりするためのものではなさそうである。
 なおこの時代、ウズラは金持ちの愛玩用の鳥であった。