松島雲居の寺にて
一葉散音かしましきばかり也 仙化
かたびらのちゞむや秋の夕げしき 津島方生
男くさき羽織を星の手向哉 杏雨
子を守るものにいひし詞の句になりて
朝顔をその子にやるなくらふもの 同
涼しさは座敷より釣鱸かな 昌長
あの雲は稲妻を待たより哉 芭蕉
棚作ルはじめさびしき浦萄哉 作者不知
草ぼうぼうからぬも荷ふ花野哉 伏見任口
行人や堀にはまらんむら薄 胡及
宗祇法師のこと葉によりて
名もしらぬ小草花咲野菊哉 素堂
つくづくと繪を見る秋の扇哉 加賀小春
谷川や茶袋そゝぐ秋のくれ 津島益音
石切の音も聞けり秋の暮 傘下
鹿の音に人の貌みる夕了哉 一髪
田と畑を獨りにたのむ案山子哉 伊予一泉
山賎が鹿驚作りて笑けり 重五
わが草庵にたづねられし比
恥もせず我なり秋とおごりけり 加賀北枝
素堂へまかりて
はすの實のぬけつくしたる蓮のみか 越人
一本の葦の穂痩しゐせき哉 防川
関の素牛にあひて
さぞ砧孫六やしき志津屋敷 其角
よしのにて
きぬたうちて我にきかせよ坊がつま 芭蕉
いそがしや野分の空の夜這星 加賀一笑
荷兮が室に旅ねする夜、草臥なをせとて、
箔つけたる土器出されければ
かはらけの手ぎは見せばや菊の花 其角
かなぐりて蔦さへ霜の塩木哉 伊豫千閣
淋しさは橿の實落るね覺哉 濃州芦夕