芭蕉db
去来宛書簡(元禄7年閏5月18日 芭蕉51歳)
盤子便御無為之旨、承令二満足一候:<ばんしたよりごむいのむね、うけたまわりまんぞくせしめそうろう>と読む。盤子は門人支考のこと。支考は前日京都から膳所に来ており、ここで去来の近況を聞いたのである。
又七:大津門人乙州のこと。
此方智月宅も茶時、正秀も其取込:<こなたちげつたくもちゃどき、まさひでもそのとりこみ>。智月は乙州の母で茶を栽培していてその茶摘で多忙だった。正秀も藩主の参勤交代の江戸出府で多忙だった。
曲水も殿御立までは隙入可レ申候間:<きょくすいもとのおたちまではひまいりもうすべくそうろうあいだ>と読む。曲水も正秀同様膳所藩重臣であったから多忙だったのである。
此方へ御見舞、廿日過まで御延引可レ被レ成候:<こなたへおみまい、はつかすぎまでごえんいんなさるべくそうろう>と読む。去来が膳所にやってくるのは、5月20日過ぎまで延ばした方がよいでしょう、の意。
廿四五之頃、或は廿二三、拙者上京可レ致候:<にじゅうしごんちのころ、あるいはにじゅうにさんにち、せっしゃじょうきょういたすべくそうろう>と読む。実際には、22日京都嵯峨野の落柿舎に落ち着く。
少々貴様へ用之事も御座候間、暫時逗留も致度候:<しょうしょうきさまへようのこともござそうろうかん、ざんじとうりゅうもいたしたくそうろう>と読む。芭蕉は、この機会に『続猿蓑』前文を去来に依頼すること、その編集をするつもりだったのである。だから暫く京に逗留を希望した。
若元子方など御かり被レ成候事も成申まじく候哉:<もしげんしかたなどおかりなされそうろうこともなりもうしまじくそうろうや>。元子は不詳。そこに宿を借りることはできないでしょうか、の意。
其段いづ方にてもかまひ無二御座一候間、御才覚被レ成可レ被レ下候:<そのだんいずかた・・かまいござなくそうろうかん、ごさいかくなされくださるべくそうろう>と読む。元子宅以外でもよいので、とにかく京都での宿舎を探しておいて欲しい、の意。結局芭蕉は去来の別荘落柿舎に落ち着くこととなる。
尤貴様御やつかい、やかましき様成事は御無用に可レ被レ成候:<もっともきさまごやっかい、やかましきようなることはごむようになさるべくそうろう>。あまりご面倒をおかけしたくありません。
武府門人、いが門弟共、無二異義(議)一候:<ぶふもんじん、いがもんていども、いぎなくそうろう>。江戸の門人たちも伊賀のそれらもみんな元気です、の意。