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桐の木の風にかまハぬ落葉かな
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桐の木の風にかまハぬ落葉かな 凡兆
其角曰、是、先師の樫木の等類也*。凡兆曰、しからず。詞つゞきの似たるのミにて、意かハれり*。去來曰、等類とハ謂がたし。同巣の句なり*。同巣を以て作せバ、予今日の吟たる、凩の地にもおとさぬ時雨哉と云巣をかりて瀧川の底へふりぬく霰哉ト言下にいふて、いさゝか作者の手柄なし*。されど兄より生れ勝たらんハ又各別也*。
- 其角曰、是、先師の樫木の等類也:<きかくいわく、これ、せんしのかしのきのとうるいなり>。其角は、凡兆のこの句をさして、芭蕉の「樫の木の花にかまわぬ姿かな」(『野ざらし紀行』)の「等類」ではないか。
- 凡兆曰、しからず。詞つゞきの似たるのミにて、意かハれり:凡兆は反論して、「そうではない。言葉が似ているだけで句意は全く違うのだ」と言った。
- 去來曰、等類とハ謂がたし。同巣の句なり:私去来は言った。「等類とまでは言えないのではないか。これは同巣<どうそう>の句と言うべきだ」。
- 同巣を以て作せバ、予今日の吟たる、凩の地にもおとさぬ時雨哉と云巣をかりて瀧川の底へふりぬく霰哉ト言下にいふて、いさゝか作者の手柄なし
:同巣とは何か。例をもって説明するなら、いま「凩の地にもおとさぬ時雨哉」という私の句を元にして、「瀧川の底へふりぬく霰哉」という句を作ったとする。しかし、これでは作者には少しの手柄もない。同じ巣から出たからだ。
- されど兄より生れ勝たらんハ又各別也:ただし、巣の元の兄分より優れた作品ならその限りではない。