膳所の便、啓上いたし候：膳所藩主本多侯の江戸への便に便乗して一筆啓上します、の意。

つかへなども：「つかえ」は芭蕉の持病、消化器系の不調。芭蕉には他に痔疾があった。

かたがた致し候て：あれこれいろいろやりながら、の意。

上着いたし候：郷里伊賀上野の到着。

雨天おほかた、小雨にあひ候て：旅行中のほとんどは雨天で、小雨だったので、の意。

馬の鞦：＜しりがい＞と読む。馬の尻尾から鞍にかけてわたす綱。

懇意の者ども：島田の船宿の主人塚本如舟等を指す。先に、『島田の時雨』に登場。如舟についてはWho'sWho参照。

馳走に致し候：これを最高のサービスとした、の意。如舟が師を助けてかいがいしく増水した大井川を渡したのであろう。

伊賀にて相達し候：5月25日付の曾良や村松猪兵衛からの手紙が伊賀で受理した、の意。

佐屋：尾張の国佐屋。

荷兮例の連衆：荷兮を中心とした例の一党、の意。彼らが道で待ち伏せしたとあるが、これは事実とは異なる。『曾良宛真蹟書簡』参照。

久居：伊勢の国＜ひさい＞、現三重県久居市。

膳所に罷り在り候：芭蕉はこの時水田正秀宅に草鞋の紐を解いた。

伊賀同名かた：兄松尾半左衛門の家。

申し来たり候：子珊から手紙で、杉風と深川の芭蕉庵を訪ねた旨の手紙が届いた、の意。杉風が芭蕉庵に残った人たちを慰める俳席を設けようとして子珊同道して行ったのであろう。子珊についてはWho'sWho参照。

俳諧の御志：芭蕉庵で俳席を持とうとしたのでしょうが・・、の意。

はかばかしきことも成り申すまじく候：あまりよい成果を上げられなかったことでしょう、の意。自分の居ない芭蕉庵でのこと、何時ものようにはいかないの意か？

沾圃会いたし候とて懐紙さし越し：沾圃が句会を催したときの作品を送ってきた。その会は、桃隣が発句を付けた。沾圃についてはWho'sWho参照。桃隣についても同様。

何れ出来候あひだ：どれも良く出来ていたので、の意。

江戸いきと写し置き申し候：伊賀の門人達が、これは江戸風であるというので沾圃の会の俳帖を筆写している、というのである。

よき所に尻を掛け居り申し候：「よき所」とは、古きよき昔の作風。名古屋や伊賀・膳所などでは古い時代の俳諧にこだわっており、まだ「軽み」など新しい風は吹いていないので、の意。

そこもとの風情：江戸で起こっている新しい気運。

『深川集』：

存知もよらず候あひだ：全く知らないのだから、の意。

総じて俳諧評判の事など・・いかがゆゑ：全体俳諧についてもっと言うべき事もあるが、差し障りもあることなので、どうかと思って、これ以上はここでは書かないが、の意。

ほのかに筆のはしを御悟り候て：私の心中を察してください、の意。

同名：伊賀の実家の家族。特に兄。芭蕉の帰りを喜び、元気になったのであろう。

猪兵衛：猪兵衛が病気だったのは、猪兵衛自身から来た上記の書簡で報せてきたのであろう。猪兵衛についてはWho'sWho参照。

寿貞：寿貞尼についてはWho'sWho参照。

必ず御事しげきうち：あなたは随分忙しい身なのだから、（お構いくださらなく結構です。そのかわり猪兵衛や桃隣に申し付けてください）というのである。

荷兮：荷兮についてはWho'sWho参照。

野水：野水についてはWho'sWho参照。

越人：越人についてはWho'sWho参照。