芭蕉db

曲水宛書簡

(元禄4年11月5日 芭蕉48歳)

書簡集年表Who'sWho/basho


 林甫子両吟*、さてさて感心仕候。世上之俗諧、皆皆ふるび果候處に*、かゝる新智めづらしく、段々とりわき評に不*、一巻一躰、病盲愚案之情、見たがふ事無御座*。愈御はげみ被遊、膳所を花の湖水と可成候。珍夕方、まけじと情(精)を出し候。
珍夕も親のごとくにつかへ申*、いづれも名残をしみ、おとゝしの春深川を出る時に似申候*。何事にも御なつかしく、公御一人御缺被成、無興のみに御座候間*、幻住庵の一冬とみづからにもねがひ申候*。人々もすゝめられ候*

百年の気色を庭の落葉哉

    霜月五日                         芭蕉
   曲水様

 1年半ぶりに帰着したばかりの江戸から膳所の菅沼曲水宛に滞在中の謝意を込めて書いた書簡。