芭蕉db
  餞乙州東武行

梅若菜丸子の宿のとろろ汁

(猿蓑)

(うめわかな まりこのしゅくの とろろじる)

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 元禄4年正月、江戸に出発する門人乙州に与えた餞<はなむけ>の吟。この句を、発句として歌仙が巻かれた模様は『猿蓑巻の五』参照。

梅若菜丸子の宿のとろろ汁

 新春を迎えて梅も花咲き、川辺には水菜が青々と茂っている。駿河の国鞠子の宿のとろろ汁もおいしい季節を迎えていることだろう。
 乙州の旅立ちへの激励が込められた餞の吟。餞別吟として古来最高の句ではないだろうか。土芳の『三冊子』には芭蕉の言葉として、「工みて云へる句にあらず。ふといひて、宣しとあとにてしりたる句なり。梅、若菜と興じて、鞠子の宿には、といひはなして当てたる一体なり」と記されている。作者自身もどうしてこの句が脳裏に湧いたか分からないと言いたいようである。
 丸子は、静岡県中部、静岡市内のもと東海道の宿駅。当時とろろ汁が名物であった。


静岡市丸子(牛久市森田武さん提供)



鞠子の丁子屋跡(同上)