芭蕉db

湯の名残り今宵は肌の寒からん

(柞原集)

(ゆのなごり こよいははだの さむからん)

   宿のあるじ挑妖に書きて給ぶ

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 元禄2年8月5日頃。『奥の細道』旅中、山中温泉での最後の日。宿の主人で門人の挑妖に書いて与えた別れの吟。同じ主旨で「湯の名残り幾度見るや霧のもと」がある。

湯の名残り今宵は肌の寒からん

 山中の湯もあなたのもてなしも共に温かあった。これから又旅を再開しますが、今夜の宿はさぞや肌寒いことでしょう。中山温泉では若い当主久米之介(挑妖)が実によくもてなしてくれた。感謝の言葉として、また一家の家宝として贈ったのであろう。挑妖の喜ぶ顔が分かるような句。


江沼郡山中町山中温和泉屋跡(牛久市森田武さん提供)