芭蕉db

湯の名残り幾度見るや霧のもと

(芭蕉翁真蹟拾遺)

(ゆのなごり いくたびみるや きりのもと)

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 元禄2年8月。『奥の細道』旅中、山中温泉を後にする時、宿の主人蕉門の挑妖に宛てて別離の吟。別に「湯の名残り今宵は肌の寒からん」もある。両句は一つのものとして作句されたのであろうが、どちらに落ち着いたかが分からない上に、十分独立のものとしてよい内容ではある。

湯の名残り幾度見るや霧のもと

 いま私は山中温泉を去っていく。その宿はもう霧に消されて見えない。あの霧の中であの人たちがまだ立って見送ってくれているであろう。後ろ髪をひかれながら旅立つ気分。