芭蕉db

   露沾公に申し侍る

五月雨に鳰の浮巣を見にゆかん

(あつめ句/泊船集)

(さみだれに におのうきすを みにゆかん)

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 貞亨4年夏、44歳。江戸。この年10月『笈の小文』の旅に出る。芭蕉はそのことをこの句を通じて露沾に予告したのである。露沾は、「時は冬吉野をこめん旅の土産」とはなむけした。

五月雨に鳰の浮巣を見にゆかん

   
 鳰<にお>は、かいつぶりのことで、琵琶湖に多く棲息したため琵琶湖のことを「鳰の海」という。
 いま五月雨の季節、さぞや琵琶湖ではいまごろ鳰が葦の根方に巣を作っていることであろう。それを見に行くよ、というのである。江戸にあって近江の琵琶湖方面に長旅をするについて鳰の巣を見に行くという軽い言い回しが俳諧であると、土芳の解説が『三冊子』にある。
 


滋賀県甲賀郡土山町常明寺境内にある句碑(2003年夏牛久市森田武さん撮影)