芭蕉db

納豆切る音しばし待て鉢叩き

(韻塞)

(なっときる おとしばしまて はちたたき)

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 元禄3年頃、47歳。

納豆切る音しばし待て鉢叩き

 「納豆切り」は、納豆を包丁で細かく砕いて納豆汁の素材とした。最初、寺院などの精進料理であったが徐々に市民の食材となった。この時期は、朝餉の食材として広く民間で使われたため納豆切りの包丁の音は冬の早朝の風物詩でもあった。
 冬の夜明け、ようやく待ちに待った鉢叩きの音が遠く聞こえる。それをかき消すように民家の台所から納豆切りの音が聞こえてくる。せっかくの鉢叩きだからちょっとの間納豆切りの音を出さないでいてほしい。
 なお、鉢叩きについては、「
長嘯の墓もめぐるか鉢叩き」「乾鮭も空也の痩も寒の中」がある。