越智越人
翁
翁 十二
珍碩 十二
曲水 十二
珍碩
珍碩 九
翁 一
路通 八
荷兮 十
越人 八
野徑
砂の小麥の痩てはらはら 里東
なまぬる一つ餬ひかねたり 乙州
秋の夜番の物もうの聲 珍碩
目の中おもく見遣がちなる 野徑
顔のおかしき生つき也 泥土
馬に召神主殿をうらやみて 乙州
一里こぞり山の下苅 怒誰
それ世は泪雨としぐれと 里東
壹歩につなぐ丁百の錢 乙州
煮しめの塩のからき早蕨 怒誰
半氣違の坊主泣出す 珍碩
のみに行居酒の荒の一□(さわぎ操の篇を馬に) 乙州
古きばくちののこる鎌倉 野徑
配所を見廻ふ供御の蛤 泥土
連も力も皆座頭なり 里東
から風の大岡寺繩手吹透し 野徑
蟲のこはるに用叶へたき 乙州
夕辺の月に菜食嗅出す 怒誰
看經の嗽にまぎるゝ咳氣聲 里東
四十は老のうつくしき際 珍碩
髪くせに枕の跡を寐直して 乙州
醉を細めにあけて吹るゝ 野徑
杉村の花は若葉に雨氣づき 怒誰
田の片隅に苗のとりさし 泥土
野徑 六
里東 六
泥土 六
乙州 六
怒誰 六
珍碩 五
筆 一
乙州
唯牛糞に風のふく音 珍碩
小哥そろゆるからうすの縄 探志
獨寐て奥の間ひろき旅の月 昌房
蟷螂落てきゆる行燈 正秀
秋萩の御前にちかき坊主衆 及肩
風呂の加減のしずか成けり 野經
鶯の寒き聲にて鳴出し 二嘯
雪のやうなるかますごの塵 乙州
初花に雛の巻樽居ならべ 珍碩
心のそこに恋ぞありける 里東
寐ごとに起て聞ば鳥啼 昌房
錢入の巾着下て月に行 正秀
まだ上京も見ゆるやゝさむ 及肩
蓋に盛鳥羽の町屋の今年米 野經
雀を荷う篭のぢゝめき 二嘯
鉢いひならふ声の出かぬる 珍碩
染て憂木綿袷のねずみ色 里東
撰あまされて寒きあけぼの 探志
轉馬を呼る我まわり口 正秀
いきりたる鑓一筋に挟箱 及肩
水汲かゆる鯉棚の秋 野經
奉加の序にもほのか成月 乙州
煤掃うちは次に居替る 里東
こひにはかたき最上侍 昌房
縄を集る寺の上茨 及肩
花の比昼の日待に節ご着て 野經
さゝらに狂ふ獅子の春風 二嘯
乙州 四 正秀 仝(四)
珍碩 仝 及肩 仝
里東 四 野經 仝
探志 仝 二嘯 仝
昌房 仝
正秀
明れば霞む野鼠の顔 珍碩
正秀 十九
珍碩 十七
寺町二條上ル町
井筒屋庄兵衛板
・江南:琵琶湖の南の意で、滋賀県大津市周辺のこと。ここでは膳所を指す中国風の措辞。
・ひさご:ひょうたん、ふくべ。
・これは是水漿をもり酒をたしなむ器にもあらず:「水漿」は酒のことをもってまわった表現。このひょうたんは酒ダルではないので、酒が入っていないと言っただけのこと。
・大樽に造りて江湖をわたれといへるふくべにも異なり:このひさごが巨大なひょうたんで、舟にして琵琶湖を渡ることができるというようなものもない、の意。荘子が大げさな表現をしたことに対して恵子が異をはさむと、荘子が意気の壮大さを説いたという故事から引いた。
・皆風雅の藻思をいへり:<みなふうがのそうしをいえり>と読む。ここ(「ひさご」の連衆を指す)に集まったものはみな詩のことばかり考えている人たちだ、の意。
・しらず、是はいづれのところにして、乾坤の外なることを:<しらず、これは・・・、けんこんのほかなることを>と読む。「乾坤の外」とは、別世界の意。
・出てそのことを云て、毎日此内にをどり入:中国「有象列仙全伝」の故事。市場で薬売りをしていた仙人じゃ夕方になると壷の中に入って夜をすごしていた。それを見つけた費長房が一緒に壷中に入って神仙の仲間になったという話を引用。この「ひさご」とひさごの仲間の世界は詩に関する神仙の集まりであり、「ひさご」の中は別世界だということ。