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電のかきまぜて行闇よかな
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電のかきまぜて行闇よかな 去來
丈艸・支考共曰、下の五文字過たり。田づらとか何とぞ有たし*。去來曰、物を置べからず。たゞ闇夜也*。兩子曰、尤句にして拙なしと論ズ*。其後艸に語りて曰、退ておもふに兩士ハ電の句と見らるゝ也。たゞ電後闇夜の句也。故に行とハ申侍る*。艸曰、さばかりハ心つかず*。いかゞ侍らん。
- 丈艸・支考共曰、下の五文字過たり。田づらとか何とぞ有たし
:丈草・支考の二人から「下五が言い過ぎだ。田面とか何とかとして欲しかったね、と言われた。
- 去來曰、物を置べからず。たゞ闇夜也:・
いや、物は置きたくない。ただ闇夜という空虚だけだ。
- 兩子曰、尤句にして拙なしと論ズ:上の二人は言った。そうか、それなら如何にも尤もらしいが面白くない句と言っておこう。
- 其後艸に語りて曰、退ておもふに兩士ハ電の句と見らるゝ也。たゞ電後闇夜の句也。故に行とハ申侍る:その後丈草に言った。お二人はこの句を稲妻の光っているときの句と読んだのだろう。そうではなくてこれは稲妻の後の闇夜に戻った時を詠んだのだ。だから「行く」と言っている、と。
- 艸曰、さばかりハ心つかず:丈草は答えて、「そんなことには気がつかなかったよ」と。どうしよう?