D15
ちる時の心やすさよけしの花
目次へ
ちる時の心やすさよけしの花 越人
其角・許六共曰、此句ハ謂不應故に別僧と前書あり*。去來曰、けし一體の句として謂應セたり。餞別となして猶見あり*。
- ちる時の心やすさよけしの花:この句は、「別僧」と前詞が有るというように、この「僧」は蕉門から破門されたかつての同僚路通でその死に臨んで越人が詠ったといわれている一句。路通の死の年については諸説があるので、真偽のほどは不明だが、本当だとすれば、波乱万丈の路通という独特な人格とあわせて、中々に複雑な読みのできる哀しい一句ではある。
- 其角・許六共曰、此句ハ謂不應故に別僧と前書あり:<きかく・きょりくともいわく、このくはいいおうせずゆえにべっそうとまえがきあり>。この句は、しっくりと表現できたという自信が無いので、越人は前詞に「別僧」(僧と別る)と前詞したのじゃないか。
- 去来曰、けし一體の句として謂應セたり。餞別となして猶見あり:去来は、花ゲシの句として十分に表現できているし、告別の句としても見所があると思うよ。