大垣大火の見舞い状を門弟如行に書いたもの。如行の親しい者達、竹戸や梅丸などにもこの便で兼ねている。大垣大火は元禄元禄5年9月4日のことだった。
其元大火、御家財消失之由相聞へ候而、笑止千万に存候:<そこもとたいか、おかざいしょうしつのよしきこえそうろうて、しょうしせんばんにぞんじそうろう>と読む。「笑止千万」は現代語と異なり「お気の毒なこと」の意である。
早々以二書音一御見舞と心懸候へ共、何角取紛候而、御無沙汰、本懐之到に候:<早々書院をもっておみまいとこころがけそうらえども、なにかととりまぎれそうろうて、ごぶさた、ほんかいのいたりにそうろう>と読む。すぐに見舞いをと思いながら多忙にかまけてご無沙汰となったのは本意ではない、の意だが「本懐之到」は「本懐之外之到」の誤記である。
風雅兼而御ひろめ置候へば、近在、縄・竹等之便り程之御事もやと、推察致候:如行が大垣の近郷近在に俳諧の弟子を沢山持っているので、彼らが復興のための縄やら竹やらを持ってきてくれるかなと想像していますが、の意。
古畑焼、芽を可レ出風雅之吉瑞にも成可レ申候:<ふるはたやけ、めをいだすべくふうがのきつずいにもなりもうすべくそうろう>と読む。耕作放棄された畑でも、これを焼いた跡に新しい芽が出てくるように、大垣の地に新しい風雅の芽の出る吉兆となると良いです。暢気なことを言っている。
四大、終に類火之約束:<しだい、ついにるいかのやくそく>。「四大」は地火風水。これらが最後には火となって燃え立って繁栄するという約束、の意 か。いずれにしてもあまり功を奏しそうもないが激励の句であろう。
家財は小変之事に候へば、御無事珍重と悦申候:家財道具が焼けてしまっても、命さえあれば何とかなるのであって、その意味から喜んでいます、の意。
兄、尾州へ御形付被レ成候よし、是も珍重之一に候:ご長男は尾張に婿に行くとのこと、これもめでたい。
春に成候はヾ、焼まぎれに御下り候而も可レ然候半様に存候:<はるになりそうらはば、やきまぎれにおくだりそうろうてもしかるべくそうらわんようにぞんじそうろう>。来春には、大火の不幸を紛らわすべく江戸へきたらよいでしょう、の意。かえすがえすも、他人事と思ってあまり心配しているように見えない書簡だ。。
今日は任行丈御尋被レ成候故、立ながら一翰如レ此御座候:<きょうはにんこうじょうおたずねなされそうろうゆえ、たちながらいっかんかくのごとくにござそうろう>。任行がきたので、この手紙を大急ぎで書いて彼に依頼しますので、乱筆です、の意。任行は桑名の門人。彼が、大火の様子や本簡を届けることを請合ったのであろう。
頃日に市之進殿参可レ申候間、其節、委細可レ申二進之一候:近々市之進が来るといっているので、その折に、また詳しく報告しましょう。市之進は不祥だが、いずれ美濃・大垣方面の者であろう。