膳所の義仲寺から京都の凡兆(加生)に宛てた書簡。痔の具合が悪く、歩行が困難であること、それでも名月の句を苦吟していることの様子が伺われる。
度々預二貴墨一候へ共、持病あまり気むつかしく不レ能二御報一候:<たびたびきぼくにあずかりそうらえども、・・・・ごほうにあたわずそうろう>と読む。ここに持病は痔疾である。特にこの時の痔の発作はひどかったようである。「持病が気難しく」というのは、非常に具合がわるい、の意。
名月散々草臥、発句もしかじか案じ不レ申候:<めいげつさんざんくたびれ、ほっくもしかじかあんじもうさずそうろう>と読む。8月15夜の名月も持病に悩まされて散々な目に遭い、句を思案する元気も有りません、の意。
湖へもえ出不レ申候:<みずうみへもいでもうさずそうろう>と読む。湖はもちろん琵琶湖である。この翌年の8月には『堅田十六夜の弁』を執筆している。
なき同前の仕合にて候:<なきどうぜんのしあわせにてそうろう>と読む。仕合せは出来栄えのこと。とるに足らない出来栄えですが、の意。謙遜である。
当河原涼の句:<とう(か)かわらすずみのく>と読む。『四條の河原涼み』の折に呻吟したことを指す。その時には完成しなかった句を後に得た。それが「川風や・・・」の句である。
職人のでしご、感心仕候:桶屋や鍛冶屋の弟子たちのこと。『四條の河原涼み』注参照。この一文は凡兆のアドバイスであり、ここでは、それが大変良かったというのである。
落書もことの外御出かし被レ成候:<らくしょもことのほかおでかしなされそうろう>と読む。意味不明。凡兆の書簡に何か書いてあって、それがなかなか良かったというのであろうが。
御病児いかゞやと無二心許一被レ存候:<ごびょうじいかがやとこころもとなくぞぜられそうろう>と読む。この頃去来の幼い娘が病気がちであったので、それをさして心配しているというのであろう。 。