徒然草(下)

第199段 横川行宣法印が申し侍りしは、


 横川行宣法印が申し侍りしは*、「唐土は呂の国なり。律の音なし*。和国は、単律の国にて、呂の音なし」と申しき。

横川行宣法印が申し侍りしは:行宣法印が以下のようなことを言った。行宣法印については伝未詳。横川<よがわ>は、比叡山北塔。ここで学僧は天台の学を学んだ。

唐土は呂の国なり。律の音なし:音楽論。中国は「呂旋法」の旋律で、日本は「律旋法」の国だ、というのだが、 私にはよく分からない。音階のとり方の相違で、ミとラに半音高低が異なるらしい。


 兼好法師は作曲法にまで興味関心を持っていた。


 よかわのぎょうせんほういんがもうしはんべりしは、「とうどはりょのくになり。りつのおんなし。わこくは、たんりつのくににて、りょのおんなし」ともうしき。