徒然草(下)

第183段 人觝く牛をば角を截り、


 人觝く牛をば角を截り、人喰ふ馬をば耳を截りて、その標とす*。標を附けずして人を傷らせぬるは、主の咎なり。人喰ふ犬をば養ひ飼ふべからず。これ皆、咎あり。律の禁なり*

人觝く牛をば角を截り、人喰ふ馬をば耳を截りて、その標とす:<ひとつくうしをばつのをきり、ひとくううまをばみみをきりて、そのしるしとす>これは「養老律令」の法律にある 。

律の禁なり:「養老律令」の「雑令」に書いてある刑罰なのだ。


 この法律、おおむね賛成できるものである。


 ひとつくうしをばつのをきり、ひとくううまをばみみをきりて、そのしるしとす。しるしをつけずしてひとをやぶらせぬるは、あるじのとがなり。ひとくういぬをばやしないかうべからず。これみな、とがあり。りつのいましめなり。