身死して財残る事は、智者のせざる処なり:死んで後に美田を残すのは、利口な人間のすることではない。
よき物は、心を止めけんとはかなし:よい物はよい物で、この死んだ人は、これが良い物だからさぞやこれに執着していたことだろうなどと、思われてしまう。
こちたく多かる、まして口惜し:むやみに多いのは、なお一層面白くない。
「朝夕なくて叶はざらん物こそあらめ、その外は、何も持たでぞあらまほしき」。つまり、子孫に美田を残すな、ということ。美田はおろか草畑一枚無い我らにはこの説教は不要と見た。