徒然草(上)

第111段 囲碁・双六好みて明かし暮らす人は、


「囲碁・双六好みて明かし暮らす人は、四重・五逆にもまされる悪事とぞ思ふ」と、或ひじりの申しし事、耳に止まりて、いみじく覚え侍り。

四重・五逆:「四重」は仏教でいう四重罪のことで、四種の重罪、すなわち、殺生(<せっしょう>生き物を殺すこと)・偸盗(<ちゅうとう>盗むこと)・邪淫(<じゃいん>姦淫すること)・妄語(<もうご>悟りを開いたと嘘を言うこと)。また、「五逆」も仏語で、五種の最も重い罪。一般には、父を殺すこと、母を殺すこと、阿羅漢(<あらかん>=佛または佛の位に達した悟りを開いた聖者)を殺すこと、僧の和合(和合僧)を破ること、仏身を傷つけることをいい、一つでも犯せば無間地獄<むけんじごく>に落ちると説かれる。五無間業。五逆罪などともいう(『大字林』)。


 博打の禁止ということ。


「いご・すごろくこのみてあかかしくららすひとは、しじゅう・ごぎゃくにもまされるあくじとぞおもう」と、あるひじりのもうししこと、みみにとどまりて、いみじくおぼえは んべり。