S06

凩に二日の月のふきちるか

凩の地にもおとさぬしぐれ哉

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　　　凩に二日の月のふきちるか　　　　 　  荷兮
　　　凩の地にもおとさぬしぐれ哉　　　 　去來

去來曰、二日の月といひ、吹ちるかと働たるあたり、予が句に遥か勝れりと覺ゆ*。先師曰、兮が句は二日の月といふ物にて作せり。其名目をのぞけばさせる事なし*。汝が句ハ何を以て作したるとも見えず。全體の好句也*。たゞ地迄とかぎりたる迄の字いやしとて、直したまひけり*。初めは地迄おとさぬ也。
　

• 去來曰、二日の月といひ、吹ちるかと働たるあたり、予が句に遥か勝れりと覺ゆ ：私は、「二日の月」という中七といい、「吹きちるか」という下五といい、私の作品より荷兮の句の方が遥かに良いと思った。
• 其名目をのぞけばさせる事なし：荷兮の句は「二日の月」というか細い月を主題としたのでただそれだけで成功しているが、それを除けばさしたるものではない。それにひきかえ・・・。
• 全體の好句也：去来の句はこれといったポイントが無いが、全体として良い句だ。
• たゞ地迄とかぎりたる迄の字いやしとて、直したまひけり：初めは、中七を「地までおとさぬ」としていたのが、いやしいとして「地にも落とさぬ」と師は直された。