S07

春風にこかすな雛のかごの衆

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　　　春風にこかすな雛のかごの衆　　　 　萩子

先師此句を評して曰、伊賀の作者あだなる處を作して、尤なつかしと也*。丈艸曰、いがのあだなるを、先師はしらずがほなれど、其あだなるは先師のあだならざるゆへ也* 。

　　　

• 伊賀の作者あだなる處を作して、尤なつかしと也：一句は、紙で作った粗末なお雛様を籠に入れて担いでいく人に向かって、春風に吹き飛ばされて転ぶなよと呼びかけている。この時代の片田舎の庶民の雛飾りは粗末なものであった。こういうどうでもよい日常的な様子を句に切り取ったのがかえって懐かしいと芭蕉が言ったというのである。
• 丈艸曰、いがのあだなるを、先師はしらずがほなれど、其あだなるは先師のあだならざるゆへ也：この句は実に良くできている句で、田舎のどうってことのない日常性を描いたに過ぎないと芭蕉は言うが、それは彼自身があまりにスーパーだからであって、自身の偉大性について芭蕉は気がついていないようだと、丈草が言ったというのである。