芭蕉db

歳暮

( 貞亨四年12月末:44歳)

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 代々の賢き人々も、古郷ハわすれがたきものにおもほへ侍るよし。我今ハはじめの老も四とせ過て、何事につけても昔なつかしきまゝに、はらからのあまたよはひかたぶきて侍るも見捨がたくて、初冬の空のうちしぐるゝ比より、雪を重ね霜を経て、師走の末伊陽の山中に至る。猶父母のいまそかりせばと、慈愛のむかしも悲しく、おもふ事のミあまたありて、

古郷や臍の緒に泣としのくれ  芭蕉

( ふるさとや へそのおになく としのくれ)


笈の小文』で帰郷の折、貞亨四年末または翌年早々にでも書いたか?