芭蕉db

奥の細道

(汐越の松)


 越前の境、吉崎の入江を舟に 棹して*、汐越の松*を尋ぬ 。
 

終宵嵐に波をはこばせて

          月をたれたる汐越の松   西行*

 
此一首にて、数景尽たり。もし一弁を加るものは、無用の指を立るがごとし*

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表紙 年表

汐越の松
 歌枕の場所を探すのに、これほど時間が掛かったのは初めてです。吉崎の浜坂まで行って、1-2時間探しましたが、どこにも手掛かりが有りません。付近の人に尋ねても、「汐越の松て何?」との反応です。雨は相変わらず本降りだし、諦めて帰ろうとした時、全昌寺の奥さんが言っていた「ゴルフ場に なってしまった」のを思い出し、海辺に近いゴルフ場を探しました。
 幸い、浜坂のゴルフ場はすぐに見つかりましたが、汐越の松はどこに有るか分かりません。ゴルフ場のフロントに尋ねたら、「汐越の松はゴルフ場の中です、ただし、今は枯れて汐越の松の残骸だけです。そこへ行くには、一般の道は無く、フェアウェーを横切るため、事前の予約が必要です。」
 これで、万事休すと思った時、ゴルフ場の支配人らしき人が、「どこから来たの?、残骸だけですが、本当に見るの?」と言ってくれた。
 雨が本降りのため、ゴルファーも途中で上がり、殆どホールアウトしていたので、「茨城なんて遠くから来たのだから案内しますよ」と、雨の中一緒に行ってくれた。
 汐越の松は既に残骸であったが、周りには沢山の松の木があり、昔の歌枕の名残は見られた。(文と写真提供:牛久市森田武さん)