芭蕉DB

野ざらし紀行

(西行谷)


 西行谷*の麓に流あり。をんなどもの芋をあらふを見るに、

芋洗ふ女西行ならば歌よまむ

(いもあらうおんな さいぎょうならば うたよまん)


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表紙 年表


芋洗ふ女西行ならば歌よまむ

 往昔、西行は、天王寺詣での途次、江口の里の遊女に一夜の宿を所望したところ断られた。そこで、「世の中を厭ふまでこそ難(かた)からめ仮の宿りを惜しむきみかな」という歌を詠んだところ、この遊女はすかさず「世を厭ふ人とし聞けば仮の宿に心とむなと思ふばかりぞ」と読み返してきた(謡曲集『江口』) 。
 一句は、西行法師なら、彼女ら川で芋を洗う女達を見たら歌を詠んで語りかけたことであろうという意味か、自分が西行ならば、女達は私に歌を詠んでくるであろうに、という意味か?。何れにせよ、芭蕉はこの 日、宿を必要としていなかった。