芭蕉db

意専宛書簡

(元禄7年1月20日)

書簡集年表Who'sWho/basho


百とせの半に一歩を踏出して*、浅漬歯にしみわたり、雑煮の餅のおもしろく覚候こそ、年の名残も近付候にやとこそおもひしられ侍れ*。去年の春、まだ片なりの、ときこえ候梅のにほひも*、今としは漸々色香しほ(を)らしく、御慈愛之ほど推察致候。
久々便不仕無音*、去年中は何角心うき事共多く取重候段、同名方迄具に申遣し候間、御聞可成候*。早々東麓庵の桜の比はと*、漸々旅心もうかれ初候。され共いまだしかと心もさだまらず候へ共、都の空も何となくなつかしく候間、しばしのほど成共上り候而、可御目と存候。定而歳旦、承度候*。愚句京板に出候而*、門人の引付ごとに書とられ候間*、いづれにて成共御覧可成と、書不申候。便り一字、慈鎮和尚より取伝へ申候*

    正月廿日                         はせを
  意専老人
尚々状数取重候間、追而腹一ぱいに書つくし可申遣

 元禄7年正月、江戸から意専(猿雖)宛の書簡。「蓬莱に聞けばや伊勢の初便」の元禄7年の歳旦吟についての記述を含む時候の挨拶書簡。