芭蕉db

牛部屋に蚊の声暗き残暑哉

(蕉翁句集)

(うしべやに かのこえくらき ざんしょかな)

牛部屋に蚊の声弱し秋の風

(芭蕉庵小文庫)

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 元禄4年7月。路通らと巻いた歌仙の発句。初案は『芭蕉庵小文庫』掲載のもの。

牛部屋に蚊の声暗き残暑哉

 牛小屋の薄暗い中に盛りを過ぎた蚊が一匹ないている。残暑の中に獣小屋の匂いが漂っている。「蚊の声暗き」という表現は「海暮て鴨の声ほのかに白し」に通ずる音声の色彩表現。芭蕉のすごさはこういうところにある。