高瀬の漁火に照らされて、水の中のカジカは波の下で漁火にむせて鳴くのであろうか。いま、カジカの鳴声が聞こえる。
ここにいう鰍<かじか>は、ハゼに似た淡水魚で口が大きく泳ぎの下手な魚で、鳴かない。鳴くのは河鹿であってこれは蛙に似た四足の動物で、魚ではない。
なお、『東西夜話』には、
「此の地に十景あり。先師むかし高瀬の漁火といふ題をとりて」と前詞して「かゝり火
に河鹿や波の下むせひ」とある。
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石川県加賀市山中温泉にある「かゝり火に河鹿や波の下むせひ」の句碑(牛久市森田武さん提供)
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カジカの棲むと言われた道命ヶ淵(同上)