芭蕉db
   岱水亭影待に

雨折々思ふことなき早苗哉

(木曽の峪)

(あめおりおり おもうことなき さなえかな)

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 貞亨元年(41歳頃)頃から死の元禄7年(51歳)までの間の5月。前詞の「影待」は、日待とも庚申待ちとも言い、 暦の庚申の日(年に6回ほど有る)に徹夜をして朝日の上るのを待つ行事。僧侶を呼んで読経をしたり、遊興娯楽にふけったり様々なモードがあったようである (五代目古今亭志ん生の落語「庚申待ち」が有名)。この句の夜は、その影待が岱水亭で行われたがあいにく雨で朝日の上るのを見ることはかなわなっかったのであろう。
 この年の秋、同じ岱水亭で「影待や菊の香のする豆腐串」と詠んでいる。

雨折々思ふことなき早苗哉

 雨がよく降って、これなら早苗の水の心配は要らないだろう。雨が降れば降ったで百姓は喜んでいるはずだとして、晴天でなければ面白くない「影待」の行事を主催した岱水への心配り 。