芭蕉db

うらやまし浮世の北の山桜

(北の山)

(うらやまし うきよのきたの やまざくら)

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 元禄5年春。金沢の門人句空宛に贈った句。浮世の北とはその金沢を指す。句空が『北の山』を編纂するに際してその発句として書いて送った。現存する『句空宛書簡』は断簡でその内容は見えないが、どうやらこの句と、ともかくもならでや雪の枯尾花」の2句を与えたらしい。

うらやまし浮世の北の山桜

 あなたの住んでいる金沢は静かな場所でうらやましい。私は今江戸にあってよろず浮世の問題に悩まされています。「浮世の北」は北国金沢の意。
 句空は、金沢卯辰山のふもとに住んでいることを芭蕉は知っていたので、句空のことを「山桜」にたとえた。
 芭蕉は、この頃、江戸蕉門の派閥抗争、親族の健康問題、住いの狭隘と喧騒など、身辺近くに多くの問題を抱えていた。


金沢市神谷内の野蛟神社句碑(牛久市森田武さん提供)