芭蕉db
   人日

四方に打つ薺もしどろもどろ哉

(続深川集)

(よもにうつ なずなもしどろ もどろかな)

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 貞亨年間(41歳〜44歳)頃までの作。
 なお、この時期の制作年次不明のものとして、10句がある。

四方に打つ薺もしどろもどろ哉

 詞書の「人日」は七日正月の意。この日は、粥を食べる習慣がある。セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロを春の七草という。古来、この日の朝は民家では早起きをして七種をきざむ。「七草、ナズナ、もろこしの鳥が、渡らぬ先に」と掛け声をかけながらきざむ。その声が方々から聞こえてくるが、その調子は合わず「しどろもどろ」なのである。
 なお、ナズナに関係する句は他に次のものがある。

古畑やなづな摘みゆく男ども

よく見れば薺花咲く垣根かな

一とせに一度摘まるる薺かな