春の七草であるナズナ(ペンペン草)の花はめだたぬちっぽけな花である。だからよく見ないと目にはとまらない。垣根の陽だまりに可憐に咲いている。詩人の目は これをしっかり見ている。進境著しいこの時期を代表する佳作だが、「よく」見なければならないところに未熟さを残した作品でもある。中国の詩人程明道の「万物静観すれば皆自得す」がヒントになっている。
なお、ナズナに関しては他にも、「四方に打つ薺もしどろもどろ哉」、「一とせに一度摘まるる薺かな」、「古畑やなづな摘みゆく男ども」などがある。
上野市西日南町、土芳の蓑虫庵にある句碑(森田武さん撮影)